宿泊日が近くなって価格を下げるホテルはどのくらいあるのか?その下げ幅は?

  • レベニュー

第2回目は当社レベニュー分析チームからの投稿です。

ホテル業界の方には「釈迦に説法」ですが、レベニューマネジメントとは需要を予測して販売価格を操作し売上を最大化する事。
航空業界で始まったと聞いています。
その通り、航空券の値段は変動します。そちらは搭乗日が近づくにつれて上がる一方です。(これ私の認識なので実際は下げる事もあるのかもしれません。)
「早割」はありますが、「直前割」はない...なので航空券はとにかく早く予約します。
対してホテルは直前に安くする事はなんとなく認識していました。
安くすると予約は入るけど、安くするホテルだとわかると直前にキャンセルして予約取り直したりできるので長い目で見れば売上は落ちる。
下げるべきか、下げないべきか、これは同じ条件で2種類の運用を比較しないとどちらが正しいかの答えは出ないので永遠の疑問とも思えます。
どちらが得かは難しいけど、下げているホテルはどのくらいあるのか、また下げるとすれば、どのくらい下げているのか、気になった実態を調査してみました。

調査条件
対象とした宿泊日 ... 2020/12/2(水)、12/5(土)
調査日 ... 2020/10/01、11/5、12/1、12/4
対象ルーム ... シングル(1人利用)、ツイン(2人利用)、和室(2人利用)
価格取得元 ... 某国内OTAサイトの最低販売価格

宿泊日はなるべくコロナの影響(Gotoキャンペーンの中止)が少なかった日をみたく、12月頭の平日と休日の2つの日を選択しました。
調査日はだいたい 2ケ月前、1ケ月前、直前としました。
(12/4の調査日には12/2の宿泊日の販売価格は取得していません。)
対象ルームはビジネス系、旅館系でなるべくデータが取れやすそうなものを対象としました。

前回調査日の価格より1円でも価格を下げている対象ルームが1つでもあれば「価格を下げたホテル」としました。
下げ額は価格を下げた対象ホテル、対象ルームの各調査日で取得した最低販売価格の最高値と最安値の差です。
下げ率は下げ額÷最高値で計算しています。

まずは地域別分析から...

地域別の価格を下げたホテルの割合

地域別の価格を下げたホテルの平均下げ率

ホテル数 価格を下げたホテル数 価格を下げたホテルの割合 1人利用 2人利用
平均下げ額 平均下げ率 平均下げ額 平均下げ率
北海道 48 36 75.0% 1,503 25.4% 5,027 31.0%
東北 47 37 78.7% 1,924 24.4% 2,909 21.9%
北信越 28 17 60.7% 1,430 18.5% 6,012 30.5%
関東 120 95 79.2% 1,984 24.3% 4,780 31.3%
東海 31 20 64.5% 2,881 33.3% 5,793 34.7%
関西 47 32 68.1% 1,208 19.9% 3,779 29.4%
中国九州 31 20 64.5% 1,248 17.9% 5,356 37.8%
全体 352 257 73.0% 1,860 24.3% 4,594 30.2%

表1:地域別の価格を下げたホテルの分析

いかがでしょうか?私は価格を下げるホテルがこんなに多いと思いませんでした。多くて50%くらいかと思っていました。
取得しているのは最低販売価格です。例えば食事付パックしか販売していなかったのを、直前に素泊まりを販売すると値下げとみなしてしまいます。しかし、かなりレアなケースと想像します。
しかも、結構な値下げ額です。自身が予約をする際に、直前に価格が下がるケースがあるのはなんとなく認識していましたが、予約を取り直した事はありません。面倒だからです。
しかし、この下げ幅の平均は当社の1泊分の出張手当とほぼ同額なのでさすがに考えてしまいました。
正直、ホテル様のためには、この情報は世に出さない方が良かったのではないか...とさえ思いました。

地域別の差は...あまりありません。しいて言うなら西に行くほど少ないですかね。

次に立地条件別の分析です。

立地条件に関する補足
リゾート ... 温泉地にある、リゾートで有名な島にある、といった明らかなリゾート地をここに分類しています。
都市 ... 住所が政令指定都市をここに分類しています。
京都、広島といった観光が多い都市も含まれますが、調査結果が都市に近かった事もあり、ここに分類しました。
郊外 ... 上記以外のホテルです。今回は○○市といった市に所在するホテルのみでした。
また一般的に成田市等、空港に近い場合は「空港」といったカテゴリーに分類する事も認識していますが、サンプル数が少なくここに分類しています。

立地条件別の価格を下げたホテルの割合

立地条件別の価格を下げたホテルの平均下げ率

ホテル数 価格を下げたホテル数 価格を下げたホテルの割合 1人利用 2人利用
平均下げ額 平均下げ率 平均下げ額 平均下げ率
都市 203 163 80.3% 2,076 26.5% 4,992 33.9%
郊外 130 81 62.3% 1,503 20.5% 3,514 25.0%
リゾート 19 13 68.4% 368 7.0% 5,701 23.9%
全体 352 257 73.0% 1,860 24.3% 4,594 30.2%

表2:立地条件別の価格を下げたホテルの分析

この結果も意外でした。
リゾートはあまり販売価格を下げないと想像していましたが、他条件とさほど変わらない割合で価格を下げていました。
しかし、下げ額は小さいので、実質、後からの値下げはあまりないのかもしれません。
郊外は都市部に比べて、下げたホテルの割合も下げ幅も少なく、多少穏やかな傾向はみられました。

最後に規模別の分析です。

規模に関する補足
部屋数によって以下のように分類しました。
... 80室までのホテル
... 81室~200室のホテル
... 201室~400室のホテル
特大 ... 401室以上のホテル

規模別の価格を下げたホテルの割合

規模別の価格を下げたホテルの平均下げ率

ホテル数 価格を下げたホテル数 価格を下げたホテルの割合 1人利用 2人利用
平均下げ額 平均下げ率 平均下げ額 平均下げ率
51 33 64.7% 2,289 31.2% 7,568 41.8%
171 126 73.7% 1,758 23.4% 4,013 28.0%
108 84 77.8% 1,901 23.7% 4,367 28.5%
特大 22 14 63.6% 1,647 22.0% 6,233 35.1%
全体 352 257 73.0% 1,860 24.3% 4,594 30.2%

表3:規模別の価格を下げたホテルの分析

この結果も意外でした。
特大はシティとかラグジュアリーと呼ばれる高級ホテルで占められ、それらのホテルは価格を下げないと想定しましたが、さほど差は出ませんでした。
詳細に見たところ、特大には大手チェーンの客室の多いホテル様がけっこう含まれており、客室数のみで高級ホテルはそもそもを抽出されていませんでした。
しかし、高級ホテルと分類されるホテル様でも、ほぼ変わらない割合で価格を下げるケースはあったのでそのまま掲載しました。1
全体的には小規模、特大規模で多少価格を下げるケースが少ない傾向が見えました。

最後に...
いくつかの角度で調べましたがいずれも多い少ないの明確な差は出ませんでした。
逆にどの角度で見ても、いずれも私の想定を大きく上回るホテルが価格を下げていました。
前述した通り、価格を下げる、下げない のいずれが正しい運用か?に明確な結論は出せませんが、指標になりそうなものは出せそうな気はしています。
その為には、もっと膨大な期間とサンプルを検証する必要があると思いますのでここでは詳述はしません。
今できる事として、下げるタイミングや当日の値動きは別途レポートしようと考えています。

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